平成20年 Ⅰ 記述問題 小問題 必須

2-5)IASP(International Association for the Study of Pain)reflex sympathetic dystrophycomplex regional pain syndrome(CRPS)と名称を変えた背景を述べよ.

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平成20年度日本ペインクリニック学会 ペインクリニック専門医試験問題および模範解答例

 

CRPS(complex regional pain syndrome)は従来,肩手症候群,Sudeck萎縮,minor causalgiaalgodystrohyなどさまざまな名称で呼ばれ,混乱していた.その後,反射性交感神経性ジストロフィー(RSD:reflex sympathetic dystrophy)とカウザルギーの2つに整理され,これらの名称が長く用いられてきた.しかし,反射性交換神経性ジストロフィーという名称が病態を現していない※ことから,国際疼痛学会が1994年に新たな診断名,定義,診断基準を定めた.従来の反射性交感神経性ジストロフィーをCRPSⅠ型,カウザルギーをCRPSⅡ型とし,現在に至っている.

 

参考文献)

・ペインハンドブック p130 2 複合性局所疼痛症候群(CRPS) A 歴史的背景

・ペインクリニシャンのためのキーワード100 p116 3.CRPSタイプⅠ

 ※1980年代の中頃から,RSDの痛みには交感神経遮断によって必ずしも改善されない種類の痛み(Sympathetically Independent Pain)が存在することが認知されるようになり,交感神経の機能異常が唯一のRSDの痛みの原因や病態生理的メカニズムとは考えられなくなってきた.

 

※この2冊は現在絶版ですが,ペインクリニックの専門医に合格するための必須本といっても言い過ぎではありません.

解答

 Reflex sympathetic dystrophy(RSD)は反射性に交感神経系が興奮してジストロフィーを生じるという考えでつけられた病名である.しかし,RSDの病態で,何らかの事を契機に反射性に患肢の交感神経系の機能が亢進してRSDとなっていることが証明されていないこと,必ずしも交感神経ブロックにより疼痛が軽減することはないことなどから,RSDは反射性に交感神経系が興奮したことが病態ではないと考えられるようになった.

 病態を示唆する病名ではなく,現象としてのCRPSという病名に変更することをIASPが提唱した.