平成20年 Ⅰ 記述問題 小問題 必須

2-2)Placeboプラセボによる鎮痛について述べよ.

⇒ 
平成20年度日本ペインクリニック学会 ペインクリニック専門医試験問題および模範解答例


 

参考文献)ペインハンドブック p179-80

Q7 プラセボの鎮痛効果の機序を教えてください.また,医療行為としてプラセボを用いていいのですか?

A プラセボの鎮痛効果の一部はオピオイド受容体を介している.鎮痛薬の臨床治験ではプラセボは必須であるが,日常の痛みの治療で意図的にプラセボを使用してはならない.

 

 プラセボは外見上薬理学的に活性を有する薬物(実薬)と区別がつかないニセ薬のことで,薬理学的に活性のない物質である.多くの場合は経口投与あるいは非経口的に使用される.

 痛みの治療においてプラセボ効果は30%の症例に発現するので,鎮痛薬の治療での効果判定では,検討している薬剤だけ使用した群の成績だけでは正確な評価ができない.治験薬とプラセボを使用した群との比較が必須である.

 

 【プラセボの鎮痛効果】

オピオイドの鎮痛に関連している前帯状回での作用による.

・疼痛処理経路での興奮性ニューロンの抑制

・オピオイド含有細胞を賦活化させる:オピオイド含有ニューロンが賦活化されると前・後シナプス性に興奮系ニューロンを抑制し,疼痛を軽減させる.この機序により,痛みでのプラセボ効果がナロキソンにより拮抗されるという減少を説明できる.

・下行性の疼痛促進系を抑制する.

・興奮系と抑制系の伝達を興奮させるが,全体として興奮系を減弱する.

 

臨床治験でプラセボを使用することは,被験者が自由意志で治験参加を取り止める権利を行使できるので倫理的に問題はない.しかし,日常臨床での痛み治療として意図的にプラセボを用いることは,患者が適切な薬理学的活性のある薬物を使用する権利を奪うものであり,詐欺行為にあたるので,プラセボを用いてはならない.

 

模範解答

(省略)